9月2日
朝ごはんを食べた後マニュを見送る。非常に興味深い出会いであった。
連絡先も交換し「困った事があったらフェイスブックにて連絡してくれ」といわれた。
便利な世の中になったものだ。
本日はお世話になっている「イブラヒム・ピースハウス」の掃除を行うことに。
掃除中、ホネストさんの所に電話連絡が。イブラヒムが足の悪化で入院したとのこと。激務に加え、この家の今後を占う裁判があることで精神的ストレスもあるようだ。
あいこちゃんと昼ごはんを食べ15時30分にようやく本日初の外出。
16時より旧市街でキリスト教巡礼の道の催しが行われると聞いて行ってみたのだが。はっきり行って期待はずれ・・・ただのツアーみたいな感じであった。
途中からツアーを見限り、嘆きの壁を見に行く事に。
この壁の前では今なお敬虔なユダヤ教の信者さんが祈っていた。
ユダヤ教の信者さんの髪型は一言で形容すると「斬新」である。宗教上なぜか”もみあげ”だけを残すようで坊主なのにも関わらず”もみあげ”だけが中国の辮髪(ベンパツ)のように残っている。それに黒ずくめの服に大きなハット。興味深い容姿である。
その後、オリーブ山に戻り展望台でのんびりしていたところ、ロバートがやってきてキリスト教とユダヤ教についての説明を受ける。
歴史的部分の説明は神様の名前が似通っていたため、ところてんのように右から左へつるりと情報が抜けていってしまったが、「神に祈るという行為は本来、教会など第3者の機関を通すのではなく、自分と神との個人的なやりとりである」という部分は好感が持てた。
後は多くの大切な事は「聖書に書かれている」とのことなど。
「自分と神とのやりとりであるならばなぜ、これだけ多くの教会が作られているのか?」
という質問に対しては「本来神は望んでいなかったが誰かが何かのきっかけで作り始めた事により拡がってしまった、個人的には作りすぎる事に反対だが、神について話し合う場としての役割もある」とのことだ。
19時半に宿に戻り、晩ご飯を食べた後、以下の4人で話し合う。
アメリカ人ロバート(32歳)
20代アメリカの銀行系の仕事で成功し、3店舗の社長として50人の社員を率いた後、人生に疑問を感じ、会社を譲り渡した後、キリスト教についての本を出版し、現在さらにキリストについて見識を深めながら今後はアフリカの孤児院でしばらく働く予定である。
韓国人パク(23歳)
アーミー期間を英語部隊として過ごした秀才。
現在4ヶ月間のイスラエルでのボランティア活動後、レポートをまとめているところ。帰国後は、大学でスペイン語を学びながら、塾の講師として金持ちからお金を集め、孤児の子供達に無料で教育をしたいそうだ。
中国人ゾンイー(30歳)
上海にてIT関係の仕事をしている。現在さらなるスキルアップのため大学院にて心理学の勉強をしているところ。1ヶ月の休みとしてイスラエル、ヨルダン、エジプト旅行中。
僕(31歳)
日本人、ただの旅行者
の4人で会話をする。
今回の4人の背景にある国は非常に複雑な関係性をもっている・・・歴史的にそれぞれ確執のある国民を代表としての語り合い。序盤は気を使いながら当たり障りの無い会話をしていたのだが、このままでは表面上の会話で終わりそうだったので、少しずつ壁を崩すには核心にせまった話をせねばならない、ものすごく気を使いながらデリケートな質問を投げかけてみる。
まずはチベットを訪れたというゾンイー(以下ゾ)に、中国とチベットの現在の関係性を聞いてみる。
僕「現在中国とチベットはお互い、理解しあう事は出来ているのか?」
ゾ「会話は漢語でできるから問題ない」
僕「言語的なものだけではなく内面的な関係性についてにはどう思うか?」
ゾ「同じ民族で同じ国だから大丈夫だと思う、チベットに訪れ、彼らの信心深さを僕は少し理解した」
僕「君個人としては理解したかもしれないが、国としてはどうか?例えば中国で君が”僕はチベット仏教を信じている”と公言することは可能か?」
ゾ「いや、それは大問題だ。中国政府はあらゆる宗教を認めていないので」
パク(以下パ)「中国は北朝鮮を常に支援していると思うのだが、北朝鮮に対する国としての考え方はどうか?」
ゾ「アメリカが韓国を支援している、だからバランスをとる為に中国、ロシアは北朝鮮を支援している」
パ「現在世界中が北朝鮮を孤立させる方向にあり、中国も少しずつそうなっているとの報道があるがそれについてはどうか?」
ゾ「たしかにそのような考えもあるようだが、アメリカが韓国を支援する限り韓国と北朝鮮が一つになる事は無いと思う」
パ「それでは韓国と北朝鮮が和平するにはどういう方法があると考えるか?」
ゾ「アメリカも中国も干渉せずに南北朝鮮のみで話を進める事。しかし今の世界情勢では現実的な考えではない」
パ「韓国人は北朝鮮に入ることも現在出来ないが、中国人は北朝鮮を自由に観光できるのか?」
ゾ「ツアーに参加してであれば旅行できるが、個人旅行はできない」
僕「個人旅行している中国人を見ることは極めて少ないが何故か?」
ゾ「今のところ個人で旅行するという概念は中国に浸透していない。また、様々なビザの制限もある。ツアーでならば旅行しやすいのでみなツアーで参加する」
ロバート(以下ロ)「君が世界中を周ったあとで北朝鮮に行き世界情勢を伝えたらどうか?(笑)」
パ「あっという間にゾンイーは撃ち殺されるだろう(笑)」
ロ「北朝鮮についてゾンイーはどう思っているか?」
ゾ「20年前の中国の姿に似ている、また中国政府は西側諸国が韓国側から攻めてきた際の壁としての役割を期待しているように感じる」
ロバートが30分ほど席を立つ
パ「アメリカ、EU、中東の力に対抗して韓国、日本、中国が連携することは考えられるか?」
ゾ「現実的にはかなり難しいし、ほとんど無理だと考える」
僕「それは歴史的な背景が原因か?」
ゾ「その辺りもおおいにあるが、アメリカがそれを許さないだろう」
僕「歴史的な背景は僕らが思っている以上に大きいだろうから、年配の人がすぐに同意するのは無理として若い世代が、歴史問題を越えて少しずつ歩み寄っていくのは可能だと思うか?」
ゾ「学校の教科書は政府に作られている。そしてその内容を国民は信じ、現実問題として日本を嫌いに感じている中国人の若者もいる。だから難しいと思う」
パ「もし教科書の内容を皆が信じているのであれば、僕ら3人が同じ席で話し合うことなんて出来ていないはずだが、僕らは現実的に話し合えてるではないか」
ゾ「確かに少しずつ皆が歩み寄っていくという考えは素敵だと思う。もちろん難しいが・・・」
ロバートが戻ってくる。
ロ「中国は宗教を全く持っていないのか?」
ゾ「禁止されているので基本的にはないが、中国古来の思想の流れを組んだ考え方がある」
ロ「聖書にも多くのよいことが書いてあるよ」
ゾ「僕は現実的な考えをすることに慣れているからただ祈るだけで物事が解決するとは思わない、祈るよりも働く事で現実的な利益がある」
(ロバートによる聖書を引用しての様々な説明)
ゾ「僕には理解できない。君(僕)はどう思うか?」
僕「ロバートにとって効果があるように多くのキリスト教の人々に対して一定の効果があるとは思うが、中国人同様に日本人も物事を論理的に考える所があり、神や聖書を絶対的に信じている人は少ない。もちろん悩み事がある時には神に祈ったりするが(笑)」
パ「僕も受験の時に祈った(笑)僕の意見としては、あまり難しく考えなくていいのではないかと思う。神を信じるのは無料だし、信じることで効果があればもうけものじゃないか。聖書に関しては僕も良い書物だと思う、時間をかけても理解できなかった物理の問題が聖書を読んだことによりあっという間に理解できた事がある。例えば宇宙の成り立ちとか。訳のわからないものの爆発で宇宙が出来たと思うより、神が創ったと信じるほうが単純で夢があると思わないか?」
ロ「聖書はとても良いものだから君達が大切なものだと思ってくれると嬉しい」
僕「様々な情報を今日もらったから僕もゾンイーも興味は出ている。だけど実際に聖書を読んでいない時点でこれはいいものだと断定は出来ないから、あせらずに待ってくれ。異なる文化を理解するということはお湯を入れたら3分で出来るカップラーメンとは違うんだから。」
僕「今日は込み入った事情の国の4人が大きな喧嘩もなく話し合えて良かった。それぞれの主張もわかったし、もちろん理解しあう難しさもわかった。今日一番重要なことはそれぞれに歩み寄る態度がもてるかどうかということだったから、有意義な話し合いが出来たと思う。僕らみたいな普通の人間がそれぞれの国の代表だったら世界はもっとシンプルなのにね」
以上のような内容をかれこれ3時間ほど、時に熱く、基本穏やかに楽しく話し合うことが出来た。違う価値観の人達と話し合うことは時に難しいけどやはり面白い。また今回の4人がそれぞれその国の特徴を現すような性格だったのが興味深かった。
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