1月28日
7時半起床。
10時より食肉工場の見学に出かける。
工場の前には1時間後には食肉になっているであろう牛達が並んでいる。その姿を見ていると頭の中で”ドナドナ”の曲が流れ込んでくる。
工場内に入るとさっそく今朝解体されたであろう牛の肉が「ドドン!!」と吊られている。
見た目にはもう牛ではなく完全なる肉だ。
工場の隅で、自分の身にこの後起こるであろうことを察して怯える牛が突然足を縛られながらも立ち上がったところを作業員の斧が一閃・・・後頭部を打ち据えられて、崩れ落ちる牛、完全に失神している。
その牛の喉を鋭いナイフでかききる。
すると、気絶していた牛が暴力的な痛みのために目を覚まし、暴れ始める、しかし喉を完全に切られているため立ち上がる事は出来ない・・・意識はほとんどないはずなので、肉体のみが本能に突き動かされて逃げようとしているのだろう。
日本では僕らの目の前から巧妙に隠されている死の匂いがここには充満している。
すでにほとんど意識がないにもかかわらず、時折足をバタつかせる牛。
しかし、1分前には間違いなく牛であった彼の体から魂は抜け出しておりもうすでにただの肉の塊になりかけている。
見ていてこれが”死”なのだと思った。
自分だってそうなのであろう、今はこうして思うがままに旅をして楽しんでいるが、一度死に絡めとられてしまえばただの肉の塊になってしまうのだろう。
それが死と言うものなのだと。
このような犠牲を経て僕らは生かされているのだと強く感じた。
僕らが生きている間にどれだけ多くの命を奪っているのだろうか。
奪ったからには大事に食べないといけないのだと今まで以上に痛感した。
また、目の前での凄惨な出来事を当たり前のものとして受け入れられている自分が怖いようにも誇らしいようにも感じられた。
敷地の外では次に肉の塊となる牛が、死への道の終点付近で不安を感じながら立ちすくんでいた。
”いただきます”の意味は”命をいただきます”なのだと痛感する。
当たり前だが町に出るとそこにはいつもの平和な日常風景が広がっていた。
本日は少し離れた青空マーケットでも牛の解体があるというので、そこへ向かうためバス停へ行く。
その道中で朝ごはん。
先ほど見た光景の後でも僕の胃は何事もなく普通に働いている。
仮にもし、いま僕が”あんな殺戮を見た後でご飯なんて食べられない”といったならばそれは卑怯だと思う。
1日たてば忘れてしまう上っ面だけの哀れみよりも、それを受け入れてちゃんと食べる事が奪い取った彼らの尊厳を守る事になるのではないかと勝手に思う。もちろん一方的に命を奪われた側にとってはどちらでも変わらないのかもしれないけど・・・・
サモサと卵フライを食べて、バスに乗りマーケットへ。
未舗装路を走る事30分ちょっとで到着。
マーケットは広々として広大。
その一角で解体が行われていた。台車で運ばれる肉の塊、おそらく30分前にはまだ牛であったのだろう。
処刑台とも思われる、そこだけコンクリートの一角、まわりにはヤギや牛が自分の番が来ることをどこかでは感じながらも、想像力の欠如からか、逃げ回るでもなく草を食んでいた。
できれば命を失うできるだけ直前までは恐怖を感じることなく過ごしてもらいたいものだ。
解体したヤギの内臓に水をいれ口で息を吹き込んで腸内洗浄をしている。
衛生面は大丈夫なのだろうか?
4つ足を縛られたヤギ、牛は抵抗する事も出来ず、ある種、観念したような表情を見せている・・・・
喉を一突きされ、気管、動脈を掻き切られる彼ら・・・・
解体したばかりの牛の皮を「剥いでみろ!!」とべっとりと血のついたナイフを手渡される。
肉から皮をはがす作業というものは思ったよりも簡単なようで、僕ら生物はこんなに脆い皮だけで守られているのだな、と実感する。
解体を見た後は屋台で肉を購入し、焼いてもらった後、残さず食べる。
いったん家に戻り昼寝をした後、17時半にタクシーに乗りタンザニア人と日本人のハーフの女性の結婚式に参加させてもらうため”アフリカンドリーム”という会場へ向かう。
18時過ぎにホンダさんの家に到着した際に新婦の母親のツバキさんがまだ、家にいたことを疑問に感じる。
新婦の母親なのに・・・
この時点で招待状に書いてあった18時には開始しない事が確定する。
結婚式もアフリカンタイムなんだな。
やはり予想どおりには始まらず20時過ぎにようやくスタート。
今回の結婚式は両家ともタンザニアではかなり裕福な家庭のためか日本の結婚式と遜色ないクオリティ。
席について紅茶を飲みながら新郎、新婦の入場を待っていると。「全員表へ出て下さい!!」と指示される。
なんだろう・・と思いながら外に出るとすぐ、「それでは中に入ってください!!」と言われる・・・「なんなんだ・・・」とわけもわからず入ろうとすると、お客達はみな踊って入場していく。なるほど・・・さすがアフリカだ。
僕らの入場後、新郎、新婦も踊りながら入場。
親族の挨拶がまぁまぁ長いのは日本と同様、そして挨拶後にはなぜか必ずダンスタイムが挟まれる・・・けっこう体力を要するな・・・
親族紹介の後になぜかこのホテルのスタッフの自己紹介もはさまれ、警備員の挨拶などを無意味に聞く。
結婚式開始から1時間以上経っているというのにまだ新郎、新婦は一言も声を発していない・・・話しているのは司会と両家の父ぐらい・・・
開始から1時間後、ようやく乾杯の音頭に・・・シャンパンを開けるのは突然選ばれた、女性と司会者。(新郎、新婦じゃないんだな・・・)
女性は上手にシャンパンを開けた後、どや顔で踊り続けていた司会者は、まさかの不発・・・かなりのどや顔で踊っていただけに見ているこっちも恥ずかしい・・・
そしてケーキ入刀。飾り付けが花火で火がボウボウと出る中ケーキ入刀。
その後のファーストバイトではお互いに口移しで食べさせ合うという、見たいような見たくないようなひとコマも・・・
切り分けたケーキの大部分が何故か僕らの席に「プレゼントだ!!」と言って配られる。
22時になりようやく晩ご飯時間。
日本の結婚式のようにコース料理風に配られるのではなく、休職の配膳のように自ら取りに行くようだ。
新郎、新婦も自ら取りに行っているのがかなり斬新。そして彼らが食べる場所は何故か部屋の隅・・・地味である。
ご飯中は音楽のみ・・・みんな普通にご飯を食べている。
食後、出し物の時間では子供たちの踊りと、大道芸人のヨガ・輪くぐり・火を食べるなど・・・。結婚式の出し物の癖にかなりお金を非常にせびってくる・・・。
そして友人、親族からのプレゼントタイム。
プレゼント後に結婚式が終了と聞いていたので「もうすぐ終わりだな」と思っていたのがまさかのエンドレスプレゼント・・・なぜかというと、渡すたびにみな踊って登場してくるので・・・オーブンや皿も踊りながらプレゼント、カンガにいたっては10枚以上、一枚ごとに新婦や親に巻きつける・・・
終盤戦もどや顔で歌い、踊り続ける司会者・・・彼のディナーショーのようだ・・・
プレゼントの後はみなの踊りタイムが始まり、途中からグダグダの流れ解散。
いろいろ日本の結婚式では見られない驚きがあったけど一番のサプライズは新郎が式の間一言も話させてもらえなかった事・・・新婦も一言のみ、でも幸せそうだったからそれで良かったのだろう。
1時15分に帰宅する。
今日は濃厚な一日だったな・・・
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